(雑おすすめ漫画9日目)ねこ耳少女の量子論
-- 2016/12/10 08:38
雑おすすめ漫画 Advent Calendar 2016 9日目
8日目は「芸大生八坂京也の数奇な冒険」でした。
遅延に開き直りも感じられてきた頃。

今日紹介するのは、本カレンダー屈指の人を選ぶであろう作品、「ねこ耳少女の量子論」です。
本作は表題の通り一時期流行った「萌え+参考書」のたぐいのものなんですが、よりによって「量子論」という入門として超わかりにくい題材をたかだか200ページの漫画で処理しようという挑戦的な試みを感じる作品です。
いわゆる学習漫画というと、「まんがサイエンス」シリーズに代表されるように、「その分野に詳しい人」が「興味津々な生徒」に「知識を教えていく」、というスタイルが基本のようです。
本作はそれを変形した「主人公に好意を持っているかのような言動をしつつ謎に量子論っぽいことを喋りまくる謎の美少女ヒロイン「あいりちゃん」」が「その少女に一目惚れして興味津々な聞き上手脳天気男子高校生「ユウキくん」」と「逢瀬を重ねつつ量子関係について思っているざっくりとした感情を語りつつ距離を縮めてゆく」というスタイルをとっています。
ヤバい奴だ。
具体的に言うとあいりちゃんは毎回毎回ユウキくんにこんな感じの語りをしていくヤバい奴で


ユウキくんはその話を忍耐強くも聞いた上で、あいりちゃんとちょっと男女関係的な進展がありそうだと量子などどうでもいいとすぐそっちの妄想に意識をかっ飛ばしていくというヤバい奴です。
学習漫画・参考書漫画にあたるはずのこの漫画ですが、特異な特徴として、ユウキくんが基本的に毎回量子論の話を「う……うん、よくはわかんないけど……」などと流してそのまま別の話をして終わる、つまり読者側に立つ主人公が話の納得・理解までたどり着いていないという点があります。
「詳細はよくわからないけれどこの用語はこういうイメージのことを言っているのか」というくらいまでを把握させるのがおそらくこの本の目標っぽいんですけれど、登場人物に理解できない=読者が分かるはずもない話をしていると開き直っているのはなかなか斬新な感じがあります。
そんなイカれたメンバーがお送りする漫画パートで、あいりちゃんの曰く「原子模型も量子論に即した感じで最初から教えてくれると色即是空っぽくていいのに……」などのなんだかふわっとした感情を感じた後に、萌え参考書につきものの文章解説があるわけですが……


ポンポン用語が出てきて謎の現象の紹介が矢継ぎ早になされつつ、「各文献を参照のこと」、「~とみなすことができる(理由は特に説明なし)」などの、良くとらえれば「興味のある人は超入門書である本作から別の入門書などにあたってほしい」という思いを感じる、悪くとらえればこの本としては投げっぱなしな印象のワードが炸裂していたり、突然ブラケット(量子力学用語)もどきの計算が始まったりと、色々短尺の中で無理している感じをうけます。
はなから理解を投げている漫画本編と、漫画とレベルの乖離した専門的知識を希釈して伝えようとする意思は感じるが伝わる気がしない置いてけぼり解説文章のコラボレーションに、一体どこら辺が対象読者なんだという疑念も生じてあたまグルグルです。
(この紹介を書いている自分は一応大学で量子力学を学んだこともあるので大体何を言いたいか分かりはするんですが、一般的な入門書の対象読者である初心者あるいは量子わかんないってなってる学生とかにこの内容を説明してなにか進展するビジョンが見えません。)
……とまあここまでちょっと酷評気味で、どこが「雑おすすめ漫画」やねんという話なんですが……。

この漫画、前述のように、会うたびに量子論に関するさわりのところをふんわり解説しつつよくわからない個人的な感情を述べる電波少女と、その少女にお近づきになるために量子論を学ぼうとするも、いつもふわっとした話をされたあげく中途半端なところで気が散って結局ほとんどなんの理解もしてなさそうな脳天気少年が、なんとなく流れでラブコメ(?)し親密になりつつ、時々よくわからない点を気にしてシリアスな伏線っぽいもの(↑)を見せつつ、量子論にかけたようなかけてないような理由で唐突などんでん返しを見せつつ、最終的にほとんどの伏線?を回収しないまま「どういうことなの……?」というオチを迎え、実はそれが次回作「ねこ耳少女の相対性理論と超ひも理論」の話に続いている、という、終始なんだか量子論にも通じる狐につままれたような雰囲気を結果として醸し出している得がたい謎体感を感じられる作品となっているんですね。
萌え参考書として、あるいは漫画として「良く出来ている」とはどう見ても言えないんですが、萌え参考書というフィールド、裏表紙(↓)の超どうでもいい内容の煽りと絶対違う対象読者想定、解説の空回り感、登場人物のイカれ方、そして極めつけに、不思議に量子論的(?)体感を味わえる味わい深さがありつつ、曲がりなりにも単体で成立しており、本の企画レベルの迷走感からするとむしろ出色のできばえと言ってもいいラブコメ(?)漫画……。

つまるところ本作、自分の中のゲテモノ食い点数役満を稼ぎ出しつつ「漫画として割と楽しめる」という、なんというか「ハイレベル」かつ「読める」希有な作品でして、こんな地味に長い文章を書く程度にはなんだか結構お気に入りなのです。
読んでいる方も思っているでしょうけど、もうこれ完全にゆがんだ楽しみ方をしているので、くれぐれもご購入にはご注意下さい。人によっては金ドブ感まであると思います。
この本、自分の見立てでは、普通のラブコメ漫画好き、量子論って何?って人、量子論初学者、なんとなくな物理好き、などの方にはおすすめできません。
本作を「読める」対象読者はおそらく、量子論をそこそこ学んだけどちょっとイメージで整理したいというフェーズにある萌え漫画好きの学生(これより良い本がたぶんあると思うけど)、量子論を理解しようという気は全くないが雰囲気だけは知りたいという人(間違った了解の仕方をする可能性があるのでおすすめはしない)、絵がかわいければ/ねこ耳ならそれで良いなどの人、メタ的な事情を含みながら漫画を読むのが好きなゲテモノ食いの楽しみ方が出来る人、等だと思います(ぉぃ
なんだかKindle Unlimited対象で入手性は良いですが、冒頭にあげたとおり本カレンダー屈指の人を選ぶであろう作品なので、我こそはという方はどうぞ(おすすめとは……)
10日目は「スケッチブック」です。
8日目は「芸大生八坂京也の数奇な冒険」でした。
遅延に開き直りも感じられてきた頃。

今日紹介するのは、本カレンダー屈指の人を選ぶであろう作品、「ねこ耳少女の量子論」です。
本作は表題の通り一時期流行った「萌え+参考書」のたぐいのものなんですが、よりによって「量子論」という入門として超わかりにくい題材をたかだか200ページの漫画で処理しようという挑戦的な試みを感じる作品です。
いわゆる学習漫画というと、「まんがサイエンス」シリーズに代表されるように、「その分野に詳しい人」が「興味津々な生徒」に「知識を教えていく」、というスタイルが基本のようです。
本作はそれを変形した「主人公に好意を持っているかのような言動をしつつ謎に量子論っぽいことを喋りまくる謎の美少女ヒロイン「あいりちゃん」」が「その少女に一目惚れして興味津々な聞き上手脳天気男子高校生「ユウキくん」」と「逢瀬を重ねつつ量子関係について思っているざっくりとした感情を語りつつ距離を縮めてゆく」というスタイルをとっています。
ヤバい奴だ。
具体的に言うとあいりちゃんは毎回毎回ユウキくんにこんな感じの語りをしていくヤバい奴で


ユウキくんはその話を忍耐強くも聞いた上で、あいりちゃんとちょっと男女関係的な進展がありそうだと量子などどうでもいいとすぐそっちの妄想に意識をかっ飛ばしていくというヤバい奴です。
学習漫画・参考書漫画にあたるはずのこの漫画ですが、特異な特徴として、ユウキくんが基本的に毎回量子論の話を「う……うん、よくはわかんないけど……」などと流してそのまま別の話をして終わる、つまり読者側に立つ主人公が話の納得・理解までたどり着いていないという点があります。
「詳細はよくわからないけれどこの用語はこういうイメージのことを言っているのか」というくらいまでを把握させるのがおそらくこの本の目標っぽいんですけれど、登場人物に理解できない=読者が分かるはずもない話をしていると開き直っているのはなかなか斬新な感じがあります。
そんなイカれたメンバーがお送りする漫画パートで、あいりちゃんの曰く「原子模型も量子論に即した感じで最初から教えてくれると色即是空っぽくていいのに……」などのなんだかふわっとした感情を感じた後に、萌え参考書につきものの文章解説があるわけですが……


ポンポン用語が出てきて謎の現象の紹介が矢継ぎ早になされつつ、「各文献を参照のこと」、「~とみなすことができる(理由は特に説明なし)」などの、良くとらえれば「興味のある人は超入門書である本作から別の入門書などにあたってほしい」という思いを感じる、悪くとらえればこの本としては投げっぱなしな印象のワードが炸裂していたり、突然ブラケット(量子力学用語)もどきの計算が始まったりと、色々短尺の中で無理している感じをうけます。
はなから理解を投げている漫画本編と、漫画とレベルの乖離した専門的知識を希釈して伝えようとする意思は感じるが伝わる気がしない置いてけぼり解説文章のコラボレーションに、一体どこら辺が対象読者なんだという疑念も生じてあたまグルグルです。
(この紹介を書いている自分は一応大学で量子力学を学んだこともあるので大体何を言いたいか分かりはするんですが、一般的な入門書の対象読者である初心者あるいは量子わかんないってなってる学生とかにこの内容を説明してなにか進展するビジョンが見えません。)
……とまあここまでちょっと酷評気味で、どこが「雑おすすめ漫画」やねんという話なんですが……。

この漫画、前述のように、会うたびに量子論に関するさわりのところをふんわり解説しつつよくわからない個人的な感情を述べる電波少女と、その少女にお近づきになるために量子論を学ぼうとするも、いつもふわっとした話をされたあげく中途半端なところで気が散って結局ほとんどなんの理解もしてなさそうな脳天気少年が、なんとなく流れでラブコメ(?)し親密になりつつ、時々よくわからない点を気にしてシリアスな伏線っぽいもの(↑)を見せつつ、量子論にかけたようなかけてないような理由で唐突などんでん返しを見せつつ、最終的にほとんどの伏線?を回収しないまま「どういうことなの……?」というオチを迎え、実はそれが次回作「ねこ耳少女の相対性理論と超ひも理論」の話に続いている、という、終始なんだか量子論にも通じる狐につままれたような雰囲気を結果として醸し出している得がたい謎体感を感じられる作品となっているんですね。
萌え参考書として、あるいは漫画として「良く出来ている」とはどう見ても言えないんですが、萌え参考書というフィールド、裏表紙(↓)の超どうでもいい内容の煽りと絶対違う対象読者想定、解説の空回り感、登場人物のイカれ方、そして極めつけに、不思議に量子論的(?)体感を味わえる味わい深さがありつつ、曲がりなりにも単体で成立しており、本の企画レベルの迷走感からするとむしろ出色のできばえと言ってもいいラブコメ(?)漫画……。

つまるところ本作、自分の中のゲテモノ食い点数役満を稼ぎ出しつつ「漫画として割と楽しめる」という、なんというか「ハイレベル」かつ「読める」希有な作品でして、こんな地味に長い文章を書く程度にはなんだか結構お気に入りなのです。
読んでいる方も思っているでしょうけど、もうこれ完全にゆがんだ楽しみ方をしているので、くれぐれもご購入にはご注意下さい。人によっては金ドブ感まであると思います。
この本、自分の見立てでは、普通のラブコメ漫画好き、量子論って何?って人、量子論初学者、なんとなくな物理好き、などの方にはおすすめできません。
本作を「読める」対象読者はおそらく、量子論をそこそこ学んだけどちょっとイメージで整理したいというフェーズにある萌え漫画好きの学生(これより良い本がたぶんあると思うけど)、量子論を理解しようという気は全くないが雰囲気だけは知りたいという人(間違った了解の仕方をする可能性があるのでおすすめはしない)、絵がかわいければ/ねこ耳ならそれで良いなどの人、メタ的な事情を含みながら漫画を読むのが好きなゲテモノ食いの楽しみ方が出来る人、等だと思います(ぉぃ
なんだかKindle Unlimited対象で入手性は良いですが、冒頭にあげたとおり本カレンダー屈指の人を選ぶであろう作品なので、我こそはという方はどうぞ(おすすめとは……)
10日目は「スケッチブック」です。
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